5月の例会は22日(金)恒例の日本記者クラブ会議室で外部講師、小野崎 敏氏をお招きして「足尾銅山の光と影」という演題で、日本の明治の近代化において足尾銅山の果たした役割と、また公害の原点としていまだにその負の資産を残している事実を伺った。
同氏は足尾で生まれ育ち、「子供のころ山は緑がないものと思っていた」との話から講演が始まった。祖父が写真家で古河市兵衛から記録写真を残すようにと託され足尾に移り住んだという足尾に深い縁のある家系。日本鉱業に勤務して現在も名誉顧問を務められているが、故郷を思う気持ちが強く、足尾の歴史を残し、後世に語り継ぐため、そして山に緑を甦がえらせるために、足尾に拠点を持ち活動を続けられている。
祖父の残した2千枚の記録写真が拡散していたのを収集してNHKのドキュメント番組として短編の記録映像として編集されたものが放映された。今の日本の繁栄の基を支えてきた労働者の人達の貧しいながらも生き生きとした姿を見ることが出来た。また、当時の厳しい労働環境と亜硫酸ガスによる公害発生の事実も窺い知ることが出来た。足尾においては日本初のコークス生成やまた水力発電が行われた等、その後の工業発展に大きく貢献した技術が生まれたことも今回初めて知った方も多かろう。
既に閉山されて久しい。今や当時の施設の一部が残るのみで、多くの、未だに荒れた山谷と亜硫酸ガスにより汚れた土壌が残されている。経済の発展の光の部分がある反面影の部分が必ずある。足尾においては汚された自然が今もなお現実として残されており、これら公害の痕跡をなくし綺麗な自然に還し、後世に残すべきでないと改めて考えさせられる講演であった。
(文責 杉野)