2015年11月度例会「米国によるロシア経済制裁とその影響~~今後の日ロ経済関係」

フォーカス・ワンの11月例会の講演会が平成27年11月27日(金)18時より恒例となっている内幸町の日本記者クラブで開催された。今回は我々多くの日本人にとって近くて遠い隣の国ロシア、今回は経済の角度から今のロシアを語ってもらい、演題は「米国による経済制裁とその影響について」、講演者は外大ロシア語科を卒業されその後商社マンとして、そして政府職員としてロシアでの駐在が延べ28年に及ぶ朝妻幸雄氏である。

 

同氏が2011年に10年振りにロシアの駐在から帰国した時に、日本人から見るロシア観に違和感を覚えたとの話からスタートした。選択的な報道が多すぎるメディアを通してしか見ていないのではないかとの指摘である。日ソ中立条約を一方的に破棄して奪取して未だに解決していない北方領土の問題、また戦後数十万人といわれる旧日本兵をシベリアに抑留し強制労働を課したことなど、強権的で横暴な国、そして閉ざされた国であるとのイメージを多くの日本人が持ち続けていることは事実である。

 

今回の講演の主題はウクライナ問題に端を発した米国が主導している経済制裁について米国・欧州諸国の思惑である国際世論とロシア世論の違いを客観的に眺める、またそれによって痛手を被っているロシア経済と大きく影響を受けている欧州経済を見つめ、現状のロシアとそれを取り巻く環境を良く理解して、そのうえで日本の立ち位置はどうあるべきかを見直す時期ではないのかとの示唆と思える。

 

一時間という限られた時間内ではあまりにも内容が多く、クロージングに用意された今後の日ロ関係をどうするという肝腎の部分が時間切れとなった感がある。ポイントをいくつか拾うと、平和条約締結に向けてこれまで素晴らしい合意を沢山してきているがここにきて米国に配慮するあまり築き上げた良い関係を減らしてきている、ルーブルが大幅安となっており今ロシアから何が買えるのか考える時期である、ロシア経済は10年周期で危機が訪れており末尾が8となる年がそれに当たり2018年プーチン大統領の任期終了がそれに当たる、などである。

 

締めくくりに20世紀にロシアの運命を変えた指導者たちとのなかでロシア国内ではブレジネフ、スターリンの評価が高く、一方ゴルバチョフ、エルツィンが最悪となっているというのも驚きとともに理解できない説明もあった。また、プーチン大統領は悲惨な過去から脱出させてくれた救世主と極めて高い支持を得ているというがこれはなるほどと思える。

 

PUTINKAという美味しいウオッカがあるらしい、一度それを飲みながらプーチン大統領が率いるロシアをもう一度じっくりと見つめ直す時期であるようだ。

 

(文責 杉野)