2016年3月度例会 「海洋産業の現状と進展に向けての提言」

 3月定例会を恒例となっている日本記者クラブ9Fの会議室において開催しました。今回の講師は会員の三菱重工OBである福居明夫氏、同氏は三菱重工業に勤務されるなか世界各地を飛び回られ、特にロンドンでの駐在を長く経験されておられます。欧州でのエネルギー事情に詳しく、今でも「英国貿易投資総省・駐日英国大使館エネルギー名誉顧問、スコットランド政府・国際開発庁アドバイザー」等、多方面で活躍されておられます。

 

今回は「海洋産業の現状と進展に向けての提言」というテーマで、日本の産業界、そして日本政府にむけての問題提起であり、すそ野が広くて巨大装置産業である海洋産業にもっと目を向けて、力を入れて振興を図り、新産業として一大産業化を計ってはどうかという投げかけであります。

 

世界の海洋産業の技術開発競争は先行する欧州、追い上げる韓国、中国の構図になっており、日本の存在感は薄く、現状は明らかに劣後しているそうです。海運、海洋土木、造船、重機械などの技術はあるが戦略的に構築されておらず、海洋探査、海洋開発施設などの技術は未成熟である。また人材育成がなされていない。平成28年度海洋関連政府予算は5,000億円超あるものの海洋エネルギー・資源開発、海洋再生エネルギーの技術促進に適用される予算は数百億円規模で、技術開発、ある程度のスケールのある実証プロジェクト、引き続く商用化へのロードマップに欠けている。また、海洋産業に関わっている公益法人は幾多とあるが、官、及び大学などの研究機関が主導権を握っており、産業界の発言力は乏しい。以上のように指摘される問題点は多くあります。

 

ではどうしたらいいのか。このような状況のもと、今日本の海洋産業を確立するために要求されるのは、今後の世界の海洋産業の増大する市場規模を見据えた、明確なシナリオとロードマップであり、それに基づく具体的であり実現可能な数値目標である。産・官・学の戦略的統合組織を形成し、イノベーション技術に対しての国家的支援が必要であると提言されておられます。

また、日本国内の地域再生との関連においての質問に対して、洋上風車設置にはロジステックの占める割合が多く、そのための港湾建設・拡充、サプライチェーンの整備が必要であり、そしてその運営に関わる雇用も発生するので地域再生に貢献するとの見解も示されました。

 

我々も産業界OBとして、本日の講演での提言を意識して、機会あるたびに発信していくことが必要であると感じました。

(文責:杉野)