篠浦 伸禎氏(医学博士 都立駒込病院脳神経外科部長)
篠浦氏は、1958年生まれ。東京大学医学部卒業後、同付属病院他で脳神経外科医として勤務。1992年シンシナティ大学分子生物学部に留学。帰国後、国立国際医療センター等で脳神経外科医として勤務。2009年より都立駒込病院脳神経外科部長として活躍。
週刊現代で「人として信頼できるがんの名医100人」に選ばれる等、日本を代表する脳神経外科医。特に、脳の覚醒下手術では、第一人者。主な著書に「脳にいい5つの習慣」ほか、多数。
今回は、「脳神経外科医からみた認知症予防について」をテーマに1時間半にわたり事例も交えながらお話しいただいた。会員にとり身近で興味深いテーマであることから参加者は今年最多数の参加となった。
講演内容の要約は以下の通り。
1.脳の使い方を知り使いきることで、ストレスを乗り超え死ぬまで
健康に生きる。
ストレスを乗り越え健康な脳を保つのに食、体、脳の使い方(心の
もちよう)から提案する。理由はその3つが脳を含めた自分の中から
発生する病気(癌、心臓病、脳卒中、認知症等)の大きな原因である
から。
2.食について(基本と応用)
原則1.生活習慣病(癌、心臓疾患、脳血管障害、認知症、糖尿病、
自己免疫疾患等)の予防、治療は玄米採食を主体とする。
原則2.乳製品、肉、卵、砂糖は極力摂らない。
原則3.発酵食品、海産物、きのこ類等を摂る日本食が日本人の脳の健康にはいい。
原則4.食事量を減らす。
原則5.スーパーフード(にんにく油、ノニジュース、アロエベラ、コーヒー、梅肉エキス等)を併用し、食療法が長く
続くようにする。そのほか脳にいい食品は、イチゴ、ブルーベリー、ナッツ類、チョコレート等。
3.体について(身体を使うことによる脳の活性化)
原則:有酸素運動(太極拳、速足歩き等)が認知症を含めた脳の病気を予防する。
抗重力筋、自我に関わる健康、治療法としては、足裏健康法、真向法、へそ按腹がいい。
瞑想で改善する症状としては、不安感の改善、不眠の改善、ストレスに強くなる、人間関係がよくなる、生きることが楽になる
等。瞑想で改善する病気は、うつ病、自律神経失調症、不眠症、不安神経症、更年期症状、依存症(アルコール、買い物、甘い
もの、占い)、パニック症候群、対人恐怖症、統合失調症。瞑想がいいのは、外界からの刺激を遮断することにより帯状回を
中心とした自我の中枢を活性化し、そのため自我が強化され、ストレスに適切に対応できるようになること。従って、瞑想を
習慣化することにより、動物脳をコントロールできるようになりストレスに強くなる。
4.心(脳の使い方)について
脳テストで自他の脳のタイプを知ることで、過去(歴史、人物)からの学びを活かし、自分の脳の健康に活かす。脳を使い切り
幸せになるには、日本精神を自分の仕事や人生に生かすことが鍵。
認知症になりにくい性格は、誠実、寛容、外交的、自立心。
上記の性格は、古来よりある日本精神であり、人間学を学び努力することでのみ獲得しうる。
脳からみた日本精神とは、①相手、物に対する感謝と真心(右脳)、②現場で理にかなった本質をつかむ(左脳)、③次の
世代のために公の脳の使い方をする(帯状回などの脳の司令塔)、④現場に役立つための合理的な型、道(小脳)、⑤現場の
ストレスで レベルアップする(視床下部)、⑥与えられた己の脳を使い切ることがゴールの6つ。
上記に徹すれば顧客産業で世界一になれる。
戦国武将の健康法は脳の重要な部分を活性化すること。
武田信玄―ラドン温泉(ホルミシス、視床下部)
上杉謙信―瞑想(自我の領域)
豊臣秀吉―茶道(右脳二次元を型にする 小脳)
徳川家康―食、乗馬(体幹つまり自我の領域)
日本精神が薄れ、自分の得にならぬことはやらぬ現代人にも可能な人間学とは、近江商人の三方よし:売り手よし(自分)、
買い手よし(右脳二次元)、世間よし(左脳三次元)の3つを同時に満たす仕事をし、そこから少しずつ私を減らすこと。
以上
篠浦先生は、講演会終了後も懇親会に参加いただき、約2時間にわたり会員からの質問に丁寧にお答えいただき、大変有意義で実のある例会となりました。
(文責 星野)